ホテルブランディングの始め方｜小規模ホテルでもできる差別化戦略

価格競争が激化する今、ホテルの成功は「立地」や「部屋数」よりもブランドの強さで決まります。大手チェーンやリゾートホテルだけでなく、今では小規模ホテルや地域密着型の宿でも、しっかりとしたブランディングによって「指名予約」や「高い口コミ評価」を獲得できる時代になりました。本稿では、「ホテルブランディング」の基本から、少ない予算でも実践できる差別化戦略までを詳しく解説します。

1. ブランディングとは“見た目”ではなく“約束”をデザインすること

ブランディングというと、多くの方がロゴやWebサイト、パンフレットなどのデザインを思い浮かべます。もちろんデザインは大切ですが、それはブランドの「見える部分」に過ぎません。本質は、宿がどんな体験を約束し、どんな価値を提供する場所なのかを明確にすることです。

たとえば、次のような問いを立ててみてください。

このホテルで過ごした人は、どんな気持ちで帰ってほしいか？
他のホテルと違う“空気感”や“物語”は何か？
地域や立地にどんな意味を持たせたいか？

こうした問いに答えることで、「都会の中で静けさを味わう」「旅人が再出発するための宿」「地元の文化を体験できるホテル」など、宿の“約束”が言葉として形になります。この言葉が、後のデザイン・写真・接客すべての軸になるのです。

2. 世界観を統一する“小さなデザイン戦略”

ブランドの印象は、施設の規模ではなく「一貫性」で決まります。どれほど小さなホテルでも、細部のトーンを統一することで、宿泊者に「このホテルには思想がある」と感じてもらえるようになります。

具体的には、次のような工夫が効果的です。

ロゴ・サインの統一：印刷物、館内案内、Webサイトで同一フォント・カラーを使う。
照明と香り：昼夜の明るさや香りをコントロールし、記憶に残る体験をつくる。
写真トーン：Webと実際の印象が一致するように、自然光ベースで撮影する。
スタッフの言葉遣い：ブランドの雰囲気に合わせ、接客トーンを統一する。

これらはすべて低コストで始められる取り組みです。たとえリニューアル工事をしなくても、細部の“整合性”を積み重ねることでブランドは強くなります。

小さな統一が、大きな印象差を生みます。

3. SNSと口コミがブランドを育てる時代

小規模ホテルにとって、広告やメディア掲載よりも影響力を持つのがSNSとレビューです。特にInstagramやGoogleマップの投稿は、ホテルの“世界観”を体現する重要な接点になります。

写真投稿のポイントは「映える」ではなく共感できる情景にあります。
たとえば、朝の光が差し込むロビー、手書きのウェルカムカード、静かな夜の共用ラウンジ——。宿の雰囲気を伝える投稿がブランドイメージを作り上げます。

また、レビューへの返信もブランディングの一部です。「ご利用ありがとうございました」だけではなく、宿の信念や大切にしている考え方を一言添えることで、他の読者にもホテルの姿勢が伝わります。

4. 運営品質こそ最大のブランディング

Archでは「ブランディングは運営で完成する」と考えています。どんなに洗練されたデザインでも、日々の運営が乱れてしまえばブランドは崩れてしまいます。

ブランドを支えるのは、再現性のある体験です。つまり、「いつ泊まっても気持ちが良い」「誰が対応しても感じが良い」状態を保つことがブランドの信頼をつくります。

清掃チェックリストを整備し、スタッフ間の品質差をなくす。
チェックイン導線をシンプルにし、宿泊者が迷わない動線を設計する。
朝食の内容や盛り付けを季節ごとに見直し、常に新しい印象を保つ。
レビューのネガティブ意見をチームで共有し、改善策を定期的に実行する。

ブランドとは「期待を裏切らない仕組み」になります。

結果として、運営品質が高まるほど口コミの内容が安定し、宿泊単価の上昇にもつながります。

5. 小規模ホテルのための「段階的ブランディング」

すべてを一度に整える必要はありません。まずは小さく始めて、段階的に磨いていくことが成功のポイントです。

第1段階：ブランドの“核”を言語化（宿の約束・目的を明文化）
第2段階：写真とWebを整備し、オンラインの印象を統一
第3段階：スタッフ教育・レビュー返信の方針を共有
第4段階：デザインリニューアルや内装調整で体験価値を高める
第5段階：自社予約サイトの構築・SNS運用・SEO/MEO対策を実施

このプロセスを踏めば、予算や規模に関係なくブランドを育てていくことができます。

6. 自社予約とブランディングの関係

OTA（AirbnbやBooking.comなど）を通じた予約は依然として強力ですが、手数料を考えると、自社予約比率を高めることが収益性の鍵になります。

自社サイトでの予約を増やすためには、単に「最安値」を打ち出すのではなく、 ブランドとしての価値を伝えるサイト設計が不可欠です。コンセプト・写真・お客様の声・ストーリーが自然に伝わる構成にすることで、宿泊者が「ここに泊まりたい」と感じる確率が上がります。

SNSから公式サイトへの導線設計も重要です。Instagramのプロフィールリンクや投稿キャプションに、コンセプトページや体験紹介ページを設定し、世界観の流れを途切れさせないようにしましょう。

7. Archが支援するブランディングのステップ

株式会社Archでは、1000施設を超える宿泊施設の運営・ブランディング実績をもとに、以下のような一気通貫の支援を行っています。

現状分析：競合・立地・レビュー・単価・稼働率の可視化
コンセプト設計：「宿の約束」を1文で定義し、ブランドの軸を明確化
デザイン統合：ロゴ・Web・内装・撮影トーンを統一
運営改善：レビュー運用、導線見直し、スタッフ教育
自社予約強化：公式サイト制作、SNS・SEO・MEO設計、リピーター施策

私たちは「立地」や「規模」ではなく、宿の思想と体験価値を軸にしたブランディングで、小規模ホテルの持続的な収益化を支援しています。

小規模ホテルでもできるブランディング戦略を一緒に考えてみませんか？
コンセプト設計からデザイン、運営改善、自社予約の強化まで、株式会社Archが伴走します。

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書いた人

株式会社Arch
代表取締役柴田敬介

1985年兵庫県生まれ。京都工芸繊維大学・造形工学科卒。建築専攻。
新卒でSMBC日興証券株式会社に入社。コンサルタントとして勤務。社内表彰を多数獲得し最年少管理職（当時）に。5年の勤務の後に起業。
2013年、株式会社XS創業。代表取締役就任。Web開発、地方創生ビジネスなどを展開。地方創生では、全国の道の駅グルメNo.1を決定するグルメグランプリを10万人規模で開催。当事業を讀賣テレビ放送株式会社に事業譲渡。
2017年、民泊事業を行う株式会社グランドゥースをAPAMAN株式会社とジョイントベンチャーにて創業。代表取締役就任。その後丸紅株式会社から出資を受け同社の持分法適用会社となる。創業3年で売上13億円、1000以上の施設を運営し、国内最大規模の民泊運営会社となる。AirbnbのBest Contributor Awardを獲得。東証への株式上場を控えていたものの、コロナウィルス蔓延に伴い事業縮小を余儀なくされる。
2023年、これまで培ってきたビジネス開発、ブランディング、Webデザイン、広告などの知見を元に、宿泊施設のブランディング、運営事業を行う当社を立ち上げ、代表取締役就任。