京都市の宿泊税が2026年3月に大幅引き上げへ｜宿泊施設運営者が今から備えるべきこと

2026年3月1日、京都市の宿泊税が大幅に改正されます。これにより、特に高価格帯の宿泊施設ではお客様の負担が増加し、料金設計やブランディングに大きな影響を与える見込みです。本記事では、宿泊施設運営者が今から備えるべき対応策を詳しく解説します。

1. 改正の概要と押さえるべきポイント

京都市の宿泊税は、2026年3月1日宿泊分から新しい税率が適用されます。現行制度の「3段階」から「5段階」に変更され、特に高価格帯の宿泊で税額が大きく上がります。

宿泊料金（1人1泊）	現行税額	改正後税額
6,000円未満	200円	200円
6,000円以上〜20,000円未満	200円	400円
20,000円以上〜50,000円未満	500円	1,000円
50,000円以上〜100,000円未満	1,000円	4,000円
100,000円以上	1,000円	10,000円

つまり、高価格帯宿泊での負担が大きくなり、税収は年間52億円から126億円へ倍増する見込みです。適用は「宿泊日基準」で、予約日や支払日ではなく実際の宿泊日により判断されます。

2. 改正の背景と目的

京都市では近年、観光客の急増により「オーバーツーリズム」や「交通混雑」「市民生活との摩擦」が課題となっています。観光客と市民が共存できるまちづくりを目指すため、宿泊税を見直し、観光インフラ・文化財保全・交通改善などに活用する方針です。

また、高価格帯宿泊の増加により課税範囲が拡大したこと、税の公平性を保ちつつ“支払い能力に応じた負担”を求める狙いもあります。単なる増税ではなく「持続可能な観光都市」への投資と位置付けられています。

3. 宿泊施設への影響

宿泊税の改定は、ホテルや旅館、ヴィラ、民泊など全ての宿泊施設に影響を及ぼします。特に50,000円以上の宿泊では税負担が4倍になるため、価格設定の再検討が必要です。

価格表示の見直し：「宿泊料金＋宿泊税」の総額表示を明確にし、宿泊者の誤解を防ぐ。
販売戦略の再設計：高価格帯の客室では“価格以上の価値”を訴求。中価格帯では稼働率重視の戦略も。
ブランディング再考：「宿泊税が地域貢献に使われる」というストーリーを伝え、宿泊者の納得感を高める。
システム・契約更新：PMSやOTA表示、宿泊約款を改定し、税額変更を正確に反映。

4. 施設タイプ別の対応策

宿泊税の影響は、施設タイプによって異なります。それぞれの立場で備えるべき具体策を整理します。

ホテル

高価格帯客室を持つホテルでは、税額アップを前提に料金再構成を実施しましょう。例えば宿泊税分を吸収して据え置くか、サービス内容を充実させて「納得できる価格」に変えるか。宿泊税を「文化財保全への貢献」として伝えることでブランド価値を高められます。

旅館

旅館では「滞在体験型プラン」強化が有効です。地元食材や文化体験を取り入れ、宿泊税分の価値を上回る体験を設計しましょう。税金説明の明確化と、宿泊日基準での対応も忘れずに。

ヴィラ

一棟貸しヴィラでは、宿泊料金が高額になりやすく、宿泊税の負担が特に大きくなります。人数構成や滞在日数を工夫し、一人当たり料金を最適化。税額分を吸収できる付加価値サービス（シェフ付きプラン、送迎など）を検討しましょう。

民泊

比較的低価格帯が多い民泊では、宿泊税アップは緩やかですが、料金表示の明確化と事前説明が重要です。宿泊税を「地域との共生」や「京都らしさ」を伝える契機として活用できます。

5. 今から備えるべきステップ

2025年末まで：税額シミュレーション、料金設計、サイト表示方針の決定。
2026年初頭：PMS・OTA・契約書の改定、スタッフ教育、宿泊者案内の準備。
2026年3月以降：新税率適用、館内掲示やサイトでの周知、影響分析。

6. 株式会社Archが考える「宿泊税改正＝ブランド強化のチャンス」

株式会社Archでは、宿泊税改正を「ブランディングを見直す絶好の機会」と捉えています。価格改定だけでなく、宿泊体験・デザイン・Webサイト・運営の全体最適化を行うことで、税改正をプラスに変えることができます。

宿泊税を通じた「地域価値創出」のストーリー設計
税増分を補える体験価値の拡充（地域文化・食・体験）
OTA・直販サイトの総額表示対応とブランド統一
Webサイト・SNSを通じた透明なコミュニケーション

宿泊税改正は、宿泊業界全体にとって“試練”でありながらも、“ブランドを磨くきっかけ”でもあります。「価格だけが上がる宿」ではなく、「価値が上がる宿」へ。今からの準備が、その差を決めます。

株式会社Archでは、宿泊施設ブランディング・Web制作・運営設計の観点から、京都市宿泊税改正への対応支援も行っています。ご相談はお気軽にどうぞ。

書いた人

株式会社Arch
代表取締役柴田敬介

1985年兵庫県生まれ。京都工芸繊維大学・造形工学科卒。建築専攻。
新卒でSMBC日興証券株式会社に入社。コンサルタントとして勤務。社内表彰を多数獲得し最年少管理職（当時）に。5年の勤務の後に起業。
2013年、株式会社XS創業。代表取締役就任。Web開発、地方創生ビジネスなどを展開。地方創生では、全国の道の駅グルメNo.1を決定するグルメグランプリを10万人規模で開催。当事業を讀賣テレビ放送株式会社に事業譲渡。
2017年、民泊事業を行う株式会社グランドゥースをAPAMAN株式会社とジョイントベンチャーにて創業。代表取締役就任。その後丸紅株式会社から出資を受け同社の持分法適用会社となる。創業3年で売上13億円、1000以上の施設を運営し、国内最大規模の民泊運営会社となる。AirbnbのBest Contributor Awardを獲得。東証への株式上場を控えていたものの、コロナウィルス蔓延に伴い事業縮小を余儀なくされる。
2023年、これまで培ってきたビジネス開発、ブランディング、Webデザイン、広告などの知見を元に、宿泊施設のブランディング、運営事業を行う当社を立ち上げ、代表取締役就任。