旅の“目的地”になる宿へ──1棟で年間売上4,000万円・自社予約率58%を実現したブランディング戦略

Category: Branding | Hotel Management
Author: Shibata
Date: 2025-05-12

株式会社Archでは、宿泊施設のブランディングやWEB施策支援を行っている一方、宿泊施設の運営、支援を行っております。

その中で、民泊や、ホテル、ヴィラなどの運営に携わってきましたが、近年注目を集めているのが、1棟ヴィラの運営です。都市近郊の立地で1棟から運営が開始できることから、不動産投資の一環として運営を希望される方が増えています。実際、ホテルを運営することに比べて非常に少ない自己資金で運営をスタートできます。また、オーナーご自身も利用する施設として購入し、使用しない期間は集客するというパターンも多くございます。

そんななか、当社の支援した案件で「年間売上4,000万円」「自社予約率58%」という数字を達成いたしました。その背景には、徹底したブランディング戦略と情報設計があります。この記事では、私たちが実際に取り組んできたブランディングと予約導線の構築方法を、可能な限り具体的にご紹介します。

1. なぜ今、「宿のブランディング」が重要なのか?

ホテルや旅館は、もはや“泊まる場所”ではありません。

スマホひとつで旅先を決める現代において、宿の写真や紹介文、SNSでの発信が「この場所に行きたい」と思わせる主な理由になっています。

ブランディングとは、「世界観」と「印象」の設計です。

宿そのものが“旅の目的地”になるためには、「どんな人に、どんな時間を提供したいのか」を明確に打ち出す必要があります。

この“目的のある宿”という存在に変わったとき、価格競争から抜け出し、選ばれる理由が生まれます。

2. ホカンスが教えてくれた、「泊まること」自体が目的になる時代

「ホカンス」という言葉が象徴するように、今は“滞在”そのものが旅の主目的になる時代です。

私たちの施設でも、「ここで何もしない贅沢を味わいたい」という声を多くいただきます。

海沿いの景色、広々とした浴室、空間を満たす香り──

“なんとなくいい”ではなく、“なぜこの設計にしているか”という理由を持って空間を整えることが非常に重要です。

旅行サイトの比較画面では伝わらない感情価値こそが、ブランディングの力です。

3. OTA最適化は“第一接点”としてとても重要

ブランディングと聞くと、自社HPやSNSの世界観づくりを思い浮かべるかもしれませんが、最初に意識すべきはOTA(楽天トラベル、じゃらん、Booking.comなど)の最適化です。

なぜなら、多くの人にとってOTAが最初の“発見の場”だからです。

  • 写真の刷新と更新:プロカメラマンに依頼し、昼・夜・季節別に撮影。新しい情報に常に更新していく。
  • プラン名や説明文の再設計:キーワードと滞在イメージを盛り込む
  • レビュー管理:どんな声にも感謝を込めて丁寧に返信し、改善に活かす

このようにしてOTAでの印象を磨くことで、露出の増加だけでなく、“宿の魅力が伝わった状態”でユーザーに選ばれるようになりました。

4. クチコミは無料で得られる最強のブランディング資産

クチコミには、広告以上の影響力があります。

「言葉で良さを語る」のではなく、「実際に感じた人の言葉」が、次の予約を生みます。クチコミの依頼をするのはもちろん、“書きたくなる体験”を設計をすることが重要です。

  • 到着時の香りや音、照明の演出
  • ウェルカムカード
  • ウェルカムドリンクやサービス
  • 写真を撮りたくなる朝食プレート

こういった細やかな工夫が、滞在後のレビューやSNS投稿に繋がっています。

5. 自社予約サイトへどうやって誘導するか? 導線の設計と習慣化

OTAで見つけてもらい、自社サイトで予約してもらう──この導線設計が戦略の核となります。以下のような仕組みを通して、「次は自社から予約しよう」と思ってもらえるよう徹底しています。

実際の施策:

  • 施設内POP:毎月の月替りの特典を設定し明確に提示
  • ベストレート保証:価格は常に公式サイトが最安。比較表も設置
  • 限定キャンペーン:季節の特典や連泊割などOTAでは実施しないプラン
  • 再訪動線の強化:LINE公式アカウントやDM登録を促進し、帰宅後のアプローチを設計

自社予約を習慣化してもらうには、“ちょっと得をした気分”を繰り返し提供することが鍵です。

6. SNS運用:世界観と人柄を伝える、もうひとつのフロントデスク

SNSは、宿の雰囲気を継続的に伝える場でもあります。常に投稿を続けることでファンをつくり、予約率を上げていきます。

投稿のコツ:

  • 季節感を出す:花、風景、食材などの“いま”を切り取る
  • 統一感のある投稿:施設のブランドイメージを統一する

広告的な発信よりも、“日記のような自然さ”がユーザーの心を動かします。

7. 公式HPは、ブランドの核を伝える最後の砦

OTAやSNSで認知され、興味を持った人が最後に訪れるのが「公式サイト」です。ここで魅力を伝えきれなければ、離脱してしまいます。

だからこそ、公式HPには以下を意識して構築しました

  • トップページで世界観を伝える:動画や大きな写真で一瞬で惹き込む
  • ストーリーコンテンツの設置:「この宿ができるまで」「オーナーの想い」など
  • FAQ・アクセス・周辺案内も丁寧に:不安要素をゼロに近づける情報設計

質感と情報量、その両方を兼ね備えることで「この宿なら安心して予約できる」と思ってもらえるようにしました。

8. ブランディングの成果:数字に表れた信頼と価値

このような取り組みを一貫して進めたことで、売上と予約導線に明確な変化が現れました。

  • 年間売上:約4,000万円(1棟貸し)
  • 自社予約比率:58%

こうした結果は、戦略や数字だけでなく、“泊まる人の気持ちにどれだけ寄り添えるか”を突き詰めた結果だと考えています。

9. 宿泊業は「空間提供業」ではなく、「時間演出業」へ

宿を単なる「箱」と捉えるのではなく、「その時間のすべてを演出する場」として考え直すこと。それこそが、これからの時代に必要な宿のあり方だと思っています。

誰に、どんな時間を過ごしてほしいのか。その“想い”を中心に据えて、空間を整え、情報を発信し、予約動線を設計する。そうすることで、宿は「価格」ではなく「価値」で選ばれる存在になります。

最後に

この記事が、これから宿を立ち上げる方、リブランディングを検討している方のヒントになれば幸いです。現場の目線で、またユーザーの視点で、ブランディングと予約導線を再設計してみてください。

“泊まりたい”よりも“行きたい”と思われる宿へ。あなたの宿にも、きっとそれは可能です。ブランディングをご検討の方は是非当社にご依頼ください。

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