Category: Hotel Management
Author: Shibata
Date: 2025.12.15

株式会社Arch 代表の柴田敬介です。
今年も残すところあとわずかとなりました。 私たち宿泊事業者にとって、大阪・関西万博があった今年は特別な一年でした。関西圏を中心にインバウンド需要は底堅く推移しましたが、現場の肌感覚としては「手放しで喜べる状況ではなかった」というのが正直なところではないでしょうか。
多くのオーナー様と対話する中で、特に深刻だったのが以下の2点です。
万博期間中も、かつてのような中国人団体客による「爆買い」や「大量宿泊」は見られませんでした。中国国内の経済事情や旅行トレンドの変化により、彼らの足が遠のいたことは、ボリュームゾーン(客数)に依存していた施設にとって大きな打撃となりました。
「客数は減ったのに、人件費などのコストは上がっている」 これが、2025年の宿泊業界のリアルな現状です。 この状況下で利益を残すためには、これまでとは全く異なる戦い方が求められます。
まず直視すべきは、中国人旅行者に依存したビジネスモデルの限界です。 これまで多くのホテルや民泊が、薄利多売でも回転率で稼ぐモデルを採用してきました。それは「圧倒的な母数」があったから成立していたことです。
その母数が減った今、空いた枠を埋めるために安売り競争を仕掛けるのは悪手です。 欧米豪や、アジアでも富裕層の個人旅行者(FIT)にターゲットを切り替える必要があります。彼らは「安さ」よりも、その土地ならではの「体験」や「快適性」を重視します。
つまり、「数を追う経営」から「質を追う経営」への強制的なシフトが、今の市場環境によって引き起こされているのです。
ここで提案したいのが、「稼働率(OCC)を最重要指標にしない」という方針転換です。
人手不足が深刻な今、稼働率を100%に近づけようとすると現場に無理が生じます。 清掃スタッフが確保できず、無理なシフトで回せばクオリティが下がり、結果としてブランドを傷つけます。「予約は入るのに清掃が間に合わないから売り止めにする」というケースも今年は頻発しました。
これからは、「稼働率は80%程度でいい」と割り切るのが現実的です。 その代わり、空いたリソースをサービス向上に充て、単価(ADR)を上げる。 少ない客室数・少ないスタッフ数で、しっかりと利益が出る構造を作ることこそが、人手不足時代の生存戦略です。
「単価を上げると客が来なくなる」という不安があるかもしれません。 しかし、ターゲットを明確にすれば、価格競争から抜け出すことは可能です。
例えば、稼働が落ちていた施設においては、ターゲットを「長期滞在の欧米人ファミリー」と「国内のペット連れ富裕層」に絞り込むことも効果的です。 キッチン設備を充実させ、愛犬と快適に過ごせる設備(滑りにくい床材や専用の足洗い場など)を導入。稼働率は下がりましたが、客単価は大幅に向上し、最終的な利益は改善しました。
「誰にでも泊まってほしい」ではなく、「この人たちに満足してほしい」と決めること。 そして、そのターゲットが喜ぶ空間(ハード)とサービス(ソフト)を用意すること。 これだけで、単価の壁は突破できます。
単価アップとセットで進めるべきなのが、業務の効率化です。 「おもてなし」と「作業」を明確に分け、作業部分は徹底的に機械に任せるべきです。
2025年現在、以下の業務は自動化が標準になりつつあります。
これらを導入することで、フロント業務の人件費を抑制できます。 浮いたコストと時間は、清掃の質の向上や、困っているゲストへのサポートなど、「人にしかできない業務」に集中させます。 DXは単なるコスト削減ではなく、限られた人的リソースを有効活用するための投資です。
株式会社Archを立ち上げて3年目。 私自身、かつては1000室規模の運営で「拡大スピード」を重視していましたが、現在は考え方が変わりました。
これからの時代に必要なのは、規模の拡大よりも、「適正な規模で、着実に利益を出し続ける」ことです。 中国市場の動向や人手不足といった外部環境に振り回されない、筋肉質な経営体質を作ることが急務です。
私たちArchは、以下の領域を一気通貫でサポートします。
「インバウンドの変化に対応できていない」 「人手不足で運営が回らない」 「リノベーションしたいが、どこに投資すべきかわからない」
そのような課題をお持ちのオーナー様は、ぜひ一度ご相談ください。 現状の数字を拝見し、どこを改善すれば利益が残るのか、現実的なプランをご提案させていただきます。
2026年は、外部環境の変化を受け入れ、賢く利益を生み出す年にしていきましょう。
宿泊施設のブランディング、OTA関連施策、マーケティング、各種制作から施設運営まで幅広く対応可能です。
お気軽にお問い合わせくださいませ。