【2024年版】宿泊施設の価格戦略完全ガイド:売上を最大化するためのプライシングの秘訣

Category: Hotel Management
Author: Shibata
Date: 2024-08-19

はじめに

宿泊施設を運営する皆様、日々の経営で最も頭を悩ませる課題の一つが価格設定(プライシング)ではないでしょうか?

「売上を最大化したいけど、どうすればいいのか分からない」、「競合施設に負けない価格設定をしたいが、安売りは避けたい」といったお悩みを抱えている方は多いと思います。

当社は全国で1,000を超える施設の運営を行ってきましたので、その中で様々なタイプ、立地の宿泊施設のプライシングを行いました。正解がわからないプライシングという業務を少しでもわかりやすく、収益の最大化の一助になればと思い、記事にしてみました。

本ガイドでは、施設規模や市場の動向に応じた効果的なプライシングの方法を、メリットとデメリットを交えながら徹底解説します!

また、競合他社との差別化や、リピーターを増やすための実践的な方法もご紹介します。宿泊施設のポテンシャルを最大限に引き出し、収益を向上させるための第一歩として是非ご活用ください!

宿泊施設にプライシングは必要か?

宿泊施設の経営において、プライシングは収益を左右する重要な要素となっています。適切な価格設定を行うことで、空室を減らし、売上を最大化することができます。

一部の高級施設では価格を固定する戦略を取ることもあり、ブランディングにいい影響を与えることもありますが、ほとんどの宿泊施設は価格を変動させています。

ただ、プライシングの考え方や手法は様々であり、それぞれの施設の立地や施設内容によっても最適な戦略は異なるため、大変難しいですが、収益の最大化には必須の作業となりますので少しずつ実践していきましょう。

ユーザーはどの様にホテルを選ぶのか?

ホテルを選ぶ際、多くのユーザーは、価格比較サイトやOTA(オンライン旅行代理店)を使い、立地、レビュー、写真などを総合的に判断して予約します。ユーザーのホテルの選び方を理解することで、効果的なプライシング手法を検討します。

価格比較サイトの台頭

ホテルを選ぶ際に価格比較サイトを利用する方が増えてきました。GoogleMapで場所と日程を指定すると、周辺のホテルを地図上に表示し、価格を比較することができます。

この方法で、自分の予算に合ったホテルをいくつか選び、最初の写真と価格が問題なければ、詳細な情報を確認し、最終的に予約へと進みます。

GoogleMap以前はあまり機能していませんでしたが、各OTAの情報が網羅的に検索できるようになり、利用者も増えていっていると感じています。

GoogleMapで「渋谷 ホテル」と検索
ホテルの情報、写真と、各OTAでの価格を比較
安いOTAに移動して予約

使い慣れたOTAでの検索

楽天ポイントやVポイント(旧Tポイント)、PayPayポイントなどのポイント獲得によって、使うOTA(オンライン旅行代理店)を固定している方も多くいます。

国内では、楽天トラベルやじゃらん、Yahooトラベル、高級宿の場合は一休、Reluxなどのサイトがよく利用されています。(一休に掲載するとYahooトラベルにも自動的に掲載されます。)

一方、外国人観光客は、Booking.com、Expedia、agoda、Trip.com、Hotels.comなどのOTAを活用します。民泊の場合はairbnbの利用が多いです。

その場合はOTA内での検索になるため、それぞれのOTA内で価格や、写真、場合によってはキャンペーン等によって施設が選ばれます。

楽天トラベルの場合、楽天ポイントが付与されます。

Agodaの値引き戦略

Agodaは独自の値引きを行っている場合があります。Agodaの手数料やキャンペーン費用が値引きに充当され、自社が登録している価格よりも安い価格で掲載されているようです。そのため、GoogleMap検索での価格比較でAgodaに誘客されることが多くあります。(ただ、実際にクリックしてAgodaサイト内を見ると違った価格になっていることもあり、予約者としては注意が必要です。AgodaがGoogleを欺いているのではないかと勘ぐっています。。。)

いずれにしても、現状、OTAでの集客を行う場合、必然的にAgodaでの予約が多くなる傾向がありますので、対応すべきOTAであると言えます。また、公式サイトを最安値にしている場合でも、上記の理由から意図せずAgodaが最安値になる場合があります。

Agodaのみ低価格になっています。

公式サイトへの誘導

また、最近のユーザーの傾向として、OTAで宿泊施設を選んだ後に、公式ウェブサイトでホテルのクオリティと最安値を確認する方が増えてきています。楽天ポイントなどのポイント加算分を加味したうえで公式サイトが最安値の場合、公式サイトで、そうでなければトータルで最も安くなる方法を探すという行動を取る場合もあります。

このあたりはユーザーの志向によるため、全員というわけではありませんが、そういった行動を取るユーザーに向けての対策があるとなお良いです。この場合、自社サイトのデザインや作り込みがあるとより効果的です。

MOROISOSO公式サイト

OTA手数料は国内OTA、海外OTAで差がありますが、15%前後かかってくるため、15,000円の予約であれば2,250円が費用としてかかっています。自社予約サイトは仕組みにもよりますが、一般的にはクレジットカード手数料(約3%)だけが費用負担となりますので、費用は450円。差額の1,800円がコスト削減となります。

ですので、この1,800円を原資として、価格を下げて最安値にする、またはギフトカードやプチギフトなどをプレゼントし、公式サイトからの予約のインセンティブにする戦略が重要となってきます。

高級ホテルや高級ヴィラに置いては、1泊あたりの金額が30万円という施設もありますので、OTA手数料が45,000円、自社予約の場合のクレジット手数料は9,000円、差額は36,000円にもなります。この原資があれば、かなりのサービスを提供できますので、顧客満足度をかなり上げることができます。

当社のクライアント様にもそのような施策をご提案しており、自社予約率を70%まで高めた例もあります。

公式HPのキャンペーン① MOROISOSO
公式HPのキャンペーン② ORDAHOTEL

InstagramなどのSNSでの周知

以前はなかった方法として、SNSでの集客があげられます。特にInstagramが宿泊施設には有力な手段となります。リゾートホテル、高級ホテル、ヴィラなど視覚に訴えやすい施設のほうが効果的です。ビジネスホテルなどの場合はキャンペーンや、イベント、付帯設備などの付加情報で訴求していきます。

インフルエンサーマーケティングも有力な方法です。施設に魅力があればコストパフォーマンス良く集客することができます。当社でもインフルエンサーのアサインから集客した実績があり、ヴィラなどは特に相性が良いです。

theView インフルエンサーマーケティング。2.7万いいねの獲得。

どのようなプライシング方法があるか、それぞれのメリット・デメリット

では、いよいよ本題ですが、プライシング手法について、どのような手法があるのか、一つずつ説明していきます。ご自身の今やっていることがどれに当たるのかなども考えながらお読みいただけると幸いです。それぞれの手法のメリット・デメリットもご説明します。

固定プライス

価格を固定し、変動させない手法。

メリット:手間がかからない。高級施設の場合値引きしないことでブランディングすることが可能。

デメリット:需要の変動に対応できない。需要の高い日に割安で販売してしまったり、売れ残って稼働率が下がる可能性がある。

まずは一番わかりやすい方法で価格を固定する方法です。固定しているのでプライシングと言えるのかというのはありますが、定価販売のようなもので、決めた価格で販売するというものです。ごく一部の高級ホテルで採用される場合があります。または田舎の民宿や、ラブホテルの価格設定などもこのパターンがあります。土日祝前日のみ別価格なども含みます。

価格を変動させないので、とにかく楽です。また、高級ホテルなどはブランド価値を保てるというブランディングとしての意味もありますが、ほとんどの場合、機会損失が発生してしまいます。ですので、この記事をお読みの方にはあまりおすすめできないプライシング手法と言えます。

シーズンと曜日によるプライシング

2つ目はシーズンと曜日で価格を決めるというものです。例えば1年間をハイシーズン、ローシーズン、ノーマルシーズンなどに分け、それぞれに対して、土日祝前日の価格を設定、お盆、正月などの特定日の価格を決めて、販売するというものです。

メリット:それほど手間がかからない。1ヶ月に1回などの作業で対応可能。

デメリット:需要の想定がハズレた場合に修正することが難しい。

こちらも大きな手間がかからない手法で、小規模のホテルなどでは採用しているところがあるかと思います。旅行代理店向けに価格表(タリフ)を出したりしている場合はシーズンの価格を先に提出することになりますので、このパターンに当たります。デメリットは先に価格を決めてしまうため、想定外に需要が旺盛になった場合に市場価格よりも安い価格で売れてしまうこと、逆の場合は売れ残ってしまうことです。固定価格よりは良いですが、最適なプライシングをすることは難しいです。

自社の在庫に基づいたプライシング

次は、自社の在庫に基づいたプライシングです。

自社の在庫が少なくなると価格を上げる。売れ残っている場合は価格を下げる。というある意味シンプルなものです。

メリット:ある程度省力化の対応が可能。自社在庫の変動により、ある程度の需要の反映が可能。

デメリット:自社の在庫が変動してから価格を動かすことになるので、初動が遅れる可能性がある。基本的には毎日対応が必要になる。属人化しやすい。

こちらは、実際には前項のシーズンと曜日による設定と組み合わせて使う事が多いと思います。ある程度初期設定をしておいて、在庫の変動を見て修正するというもの。お客様のホテルでも採用されていることが多いです。大失敗はしにくいですし、良い手法ですが、どのくらい埋まれば上げていいのか、どのくらい売れ残っていたら下げるべきなのかなどの判断が結構難しいです。

結果的に支配人の感覚によるところが大きくなり、属人化しやすくなるところがデメリットです。あとありがちなのが、日常業務に追われて、価格調整を後回しにされてしまうパターンもあり、手間の少なさというのも運営においては重要であると感じています。

競合の価格に基づいたプライシング

競合の価格に併せて自社の価格を変動させる手法です。

メリット:需要の変動をいち早く取り入れることができる。高くしすぎる、安くしすぎるといった大きなミスが少ない。

デメリット:競合の影響を大きく受けるため、競合の戦略によってこちらの売れ行きが最適化されない可能性がある。また、競合が在庫無しの場合に指標がなくなってしまう。

近くに同レベルの施設が複数ある場合には特に機能しやすいです。お客様が競合と比較してホテルを選択するという行動パターンを取る場合、競合との価格差は非常に重要な要素になってきます。客観的に見て、競合と立地、設備、新しさ、部屋の広さなどで同程度であれば、わずかに低い価格を設定することで、価格順に並べた際に上位に表示することができ、集客に繋がります。

デメリットとしては、競合の価格戦略に大きく左右されるため、競合が価格を低くしすぎたときにはこちらも下げすぎの状態になり、トータルの売上が下がってしまいます。高くしすぎた場合も同様です。また、競合の在庫がなくなった場合や、プランを削除した場合も対応が難しいという難点があります。

また、競合を常にチェックしないといけないため、手間がかかるというのも難点です。

複合プライシング

上記の4つの戦略を効果的に組み合わせる手法。

メリット:うまく機能すれば収益の最適化を目指せる。

デメリット:とにかく手間がかかる。また、複数の要素を組み合わせるため、設計の難易度が高い。

前述の要素を全部組み合わせた手法です。すべての要素を考慮して価格調整するので、うまく行けば最適な価格設定を実現できますが、完成度を上げるには高度な技術と手間がかかります。

具体的には、

  1. 特定日を固定価格
    クリスマス、正月、特定のイベント(ライブ、フェスなど)がある場合は固定価格
  2. それ以外はシーズンと曜日による価格をベースとして設定
  3. 他社の価格をチェックし、ズレを修正。
  4. 自社在庫数の変動をベースに更に価格を上下させる。

という流れになります。文字にすると簡単そうですが、そもそも、どの価格で固定して、どの様に変動させるのかというロジックを固めていく作業が難しいです。

当社がサポートしているホテルでは、
1.は月1回、カレンダーを公開するときに定例会議で協議。

2,3は毎日競合の価格を調査。競合との価格差や計算ロジックを毎月検討。

4.の自社在庫は毎日チェック。直近での売れ残りや在庫が減りすぎているかのチェック、また、特定日の売れ行きを確認し、売れ残りを回避。

という形で進めています。

競合の価格を調査するのがかなり手間なので、システムを開発し半自動で回るようにしています。最終的に人の目でチェックしているという形です。プライシングでお困りの際はご相談くださいませ。

Aiによるプライシング

最後にAiによるプライシングです。Aiが自動判断して価格を調整します。

メリット:手間がかからずに価格調整ができる

デメリット:費用がかかる。また、価格調整が正しいのか、ロジックが正しいのかがわからないため、調整していくことが難しい。

これは実際にどの程度のものかがまだ当社では試せていません。理論上は最適化されそうな気がしますが、情報を学習させるのもかなり大変だと思います。自社と他社の時系列データを与える必要があるのと、実際には為替や少し前だとコロナの影響など複合要因になるので、そこも加味した判断ができるかどうかというところです。

うまく回れば、全く手間を掛けずに最適な価格設定ができることになるので、非常に期待しています。いつか開発して使えるようにしたいと考えています。

施設の部屋数によって異なる戦略

ここまで、プライシング方法についてお話しました。プライシング方法はどういう判断材料を元に価格を変えるかという、いわば道具の部分の話で、それに加えて、自分の施設がその道具をどう使うべきかという戦略も重要になってきます。宿泊施設の種類や規模、立地などによって、取るべき戦略が異なってきますので、最後にそちらについて述べたいと思います。

100室以上のホテル

100室以上のホテルの取るべき戦略としては、在庫状況の適切な管理、OTAとリアルでの販売の融合です。

総在庫数が多い場合、いきなり全在庫を売り切ったりすることができません。ですので、ある程度早めに在庫を捌いたり、団体客の取り込みで効率的に販売することが必要になってきます。修学旅行、社員旅行など大型の予約を獲得できる可能性があるため、旅行代理店などとの連携を深め、効率的な営業計画を建てます。ビジネス街の場合は周辺の法人の異動ニーズなどを捉えられる可能性もあるため、DMの送付などのリアルな営業戦略を検討する

プライシングにおいては、先述の複合プライシングを採用します。

エリアで行われるイベント情報、過去の自社の稼働などによって、ベースとなるプライスカレンダーを作成し、日々の調整を行います。自社がマーケットリーダーに近い位置の場合や、ブランディングが効いている場合は、他社に合わせた価格調整よりは強気の価格設定で埋める戦略を取ります。

また、総在庫数が多いため、早割などを使い、早期から在庫数調整、リードタイムが短くなるにつれて、価格を上げていくことが重要です。カレンダーオープンからは自社在庫のブッキングカーブ(予約曲線)をチェック、売れ行きによって、価格を変動させる。

99室以下の中規模ホテル

ORDA HOTEL

大規模ホテルの在庫戦略に巻き込まれないよう、ある程度価格を保ち、在庫を減らしすぎないようにします。

大規模ホテルと同じく、エリアで行われるイベント情報、過去の自社の稼働などによって、ベースとなるプライスカレンダーを作成する。大まかなシーズナリティは周辺ホテルを参考にし、自社の在庫により価格を変動させる。また、自社の個性を際立たせるような企画や内装ができないかを検討し、コンセプトを作っていくことも重要です。

1棟貸し切りのヴィラ

ACTVILLA

ヴィラの場合、コンセプトや立地、内装など、他施設との差別化を図っていることが多いと思われます。また、運営する目線に立った場合は、ただの田舎の一軒家にならないように、どう目立たせるか、何のためにきてもらうかを明確にする必要があります。

物件のポテンシャルを見極めたうえで、ベースとなる価格を決めていきます。また、在庫が1しか無いため、在庫数による変動はできないため、常に1か0かの二択となり、在庫数が多いホテルなどとはまた違った難しさがあります。

シーズンと曜日による固定価格をベースに、月間の稼働率を見ながら価格を調整していくという形になります。またリピーター獲得による自社サイトへの誘導やファン化などを目指し、価格と利益率を上昇させていくことを目指します。

当社ではヴィラを得意としていますので、お困りの際は是非お問い合わせください。

民泊

STAY ARI 新宿御苑

民泊はホテルヴィラとはまた違った戦略となります。価格重視のユーザーが多いため、周辺施設の価格をチェックし相場に合わせて調整することが重要になってきます。ただ、収容人数の多い物件は希少性が高いため、強気の価格設定でも高稼働が取れる場合があります。

競合価格の併せての変動を重視しつつ、施設のクオリティが高い場合は高値で貼る、周辺と同程度もしくは低い場合は価格で勝負していく戦略を取る形となります。

まとめ

ここまで、ホテルプライシングの考え方と具体的な手法、施設の種別による取るべき戦略についてお話しましたがいかがでしたでしょうか?正解がわかりにくい、プライシングという仕事に対して、一つの道標になりましたら幸いです。

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