Category: Hotel Management
Author: Shibata
Date: 2025.12.08

ホテル運営において、もっとも頭を悩ませる要素のひとつが価格設定(プライシング)です。以前は「周辺相場に合わせる」「繁忙期は少し上げる」程度でも売上は安定しましたが、現在は旅行需要・競合ホテル・OTAの動きが日々変化し、固定的な価格設定では収益が取りこぼされてしまいます。
売れすぎても利益が伸びない、強気に出すと稼働率が落ちる。こうしたジレンマを解消するためには、感覚ではなくデータに基づく価格戦略が不可欠です。本記事では、支配人が今日から実践できるホテル価格設定の考え方を体系的にまとめます。
ホテルの価格は本質的に需要(泊まりたい人の多さ)と供給(客室数)で決まります。宿泊需要が高い日には価格を上げ、需要が低い日には価格を調整して稼働率を確保することで、年間収益が最大化されます。
最初に考えるべきは、施設の需要構造が「曜日」「季節」「イベント」「天候」でどう変化するかを把握することです。
価格設定は単独では成立しません。同エリアの競合がいくらで販売しているかで、ユーザーの“価格期待値”が決まるためです。競合の中でも以下の施設を重点的にチェックします。
・同ランクのビジネスホテル
・同規模のシティホテル
・新規開業ホテルや外資系の動き
・周辺の高級ホテル(価格の天井を作る)
自施設が競合より強い日・弱い日を見極めることで、攻めるべき価格と守るべき価格が明確になります。
需要が落ち込む日は価格を下げざるを得ませんが、どこまで下げても良いわけではありません。清掃費、人件費、変動費などを踏まえて、赤字にならない価格=フロアプライスを設定しておく必要があります。
OTAの価格は、基本的には「公式サイトより少し高く」設定するのが鉄則です。理由は2つあります。
1. OTA手数料で利益率が下がるため
2. 自社予約を増やした方が長期的に収益が安定するため
しかし、OTAには集客力があるため、空室が多い日にはOTAを強めに設定するなど、メリハリが必要です。
公式サイト最安値保証はホテルのスタンダードになっています。ユーザーは複数チャネルを比較して予約するため、最安値が公式サイトにあることで、自社予約率が確実に向上します。
OTAより500〜1,500円程度の差をつける、あるいは特典(レイトチェックアウト・ドリンク券など)を付け、価格以外でも“公式のメリット”を作ることが重要です。
電話予約や常連のお客様には、OTAの手数料が発生しない分、柔軟な価格設定ができます。特にリピーターには“特別価格”を用意することで、継続的な来館につながります。
価格調整は以下の3つを毎日チェックすることで精度が高まります。
1. 予約ペース
前年・前週と比較し、予約が進んでいるか遅れているかを確認。
2. 競合価格
同エリアの価格を毎日チェックし、自施設の強弱を把握します。
3. イベント・天候
大型イベントや天候悪化で需要が急変するため、柔軟に対応する必要があります。
ホテルの規模が大きい場合や繁忙期には、手動で価格調整をするのは困難です。Airx、ねっぱん、RateGainなどのツールを併用することで、需要予測と価格管理が効率化されます。
価格調整にはスピードが重要です。公式サイトの料金反映が遅いと、OTAと価格差が生まれ、ユーザーの不信感につながります。CMSやPMSとの連携を強化し、数分で価格変更できる体制が理想です。
価格競争に巻き込まれると、利益率が低下し、スタッフ教育や施設投資が滞り、さらに満足度が下がるという悪循環に陥ります。
以下のような付加価値を提供することで、価格を下げずに稼働率を維持できます。
・サウナや大浴場の強化
・ウェルカムスイーツやドリンク
・ワークスペースの提供
・写真映えする朝食や空間演出
・客室アップグレードの仕組み
価格を下げるより、価値を高める方が収益性は確実に上がります。
価格設定は「安い方が良い」「高い方が儲かる」といった単純なものではありません。需要・競合・販売チャネル・価値提供の4つを総合的に判断し、日々最適化することが、収益を最大化する唯一の方法です。
ホテルの強みは施設ごとに異なるため、価格戦略も“施設オリジナル”であるべきです。御社のように、地域や立地、ブランド設計、ターゲットの特性を理解しながら、公式サイト・OTA・直販を一体設計することで最適価格が見えてきます。
価格設定に迷う場合は、まず「競合」「需要」「価値」の3つを整理するところから始めてみてください。それだけでも、売上の見え方は大きく変わります。
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