2026年の宿泊市場を読み解く。三菱地所やヒルトンが「アパートメントホテル」に注力する背景と投資戦略

Category: Hotel Management
Author: Shibata
Date: 2026.02.12

アパートメントホテル

2026年2月、日本の観光業界は堅調な推移を見せています。インバウンド需要の回復に加え、特に中国からの旅行客の動向が「団体による消費」から「個人による体験・長期滞在」へと明確に変化したことで、宿泊施設に求められる機能も様変わりしました。

こんにちは。株式会社Arch代表の柴田です。私は証券会社でのキャリアを経て、これまで1000施設以上の宿泊運営に携わってきました。金融と現場の両面を見てきた経験から、現在の宿泊市場は「投資効率と運営の合理化」がよりシビアに問われる再編期にあると考えています。

今、大手デベロッパーや外資系ホテルチェーンが「アパートメントホテル」や「大規模リノベーション」に注力しているのは、決して偶然ではありません。そこには、現在の建築コストや人件費を考慮した上での合理的な判断があります。

今回は、直近のニュースを整理しながら、これからの宿泊運営者が収益を最大化するために必要な視点を、不動産・デザイン・ITの観点から解説します。

なぜ大手は「アパートメントホテル」への参入を急ぐのか

WayPoint

2026年に入り、三菱地所が長期滞在向け新ブランド「WAYPOINT」の第1号店を築地に開業することや、ヒルトンが「アパートメント・コレクション」を日本でも展開することが話題となっています。

これらがいわゆる「一般的なホテル」ではなく「アパートメント形式」である点に、現在の市場の勝ち筋が隠されています。

1. 労働力不足に対応する「省人化」モデル

現在の宿泊業界における最大の経営課題は、上昇し続ける人件費と人手不足です。アパートメントホテルは、客室内にキッチンや洗濯機を備えることで、ホテル側の付帯サービス(ランドリーサービスやレストラン運営など)を最小限に抑えることができます。

これにより、運営に必要なスタッフ数を大幅に削減でき、GOP(営業純利益)率を向上させることが可能です。少ない人数で高い収益を上げるモデルは、今の時代のスタンダードになりつつあります。

2. 中国市場の変化と「多人数・長期滞在」ニーズ

インバウンド、特に中国からの旅行客の質が大きく変わりました。以前のような「爆買い」を目的とした団体ツアーは影を潜め、現在は家族や親しい友人同士で長期間滞在し、現地の生活を楽しむスタイルが主流です。

こうした層にとって、15〜20平米の狭いビジネスホテルに分かれて泊まるのは不便です。「WAYPOINT」のように、1室に4人以上で宿泊でき、自炊も可能な広い空間は、現在のインバウンドニーズに合致しています。1室あたりの単価(ADR:平均客室単価)を高く設定しても、宿泊客側からすれば「1人あたりのコスト」が抑えられるため、非常に選ばれやすいのです。

建築コスト高騰下での「リノベーション」戦略

新規開発コストが増大し続けている2026年において、ゼロから建物を建てる「新築」のハードルは非常に高くなっています。そのため、既存の不動産を再生させる「リノベーション」の重要性が増しています。

浅草で予約が開始された「YOLO ASAKUSA STAY」のように、既存の戸建てをフルリノベーションして宿泊施設へ転換する動きは、今後の不動産投資の主流になるでしょう。

投資回収を早める「既存資産の有効活用」

証券マンの視点で見れば、投資回収期間(ROI)を短縮するためには、初期投資(CAPEX)をいかに抑えるかが肝要です。新築で利回りを確保するのが難しい現状、立地の良い既存物件を「デザイン」と「IT」でアップデートする手法は、最も手堅い投資手法の一つです。

「YOLO ASAKUSA STAY」のような事例は、単に内装を綺麗にするだけでなく、最大6名という多人数収容を可能にすることで、平米あたりの収益性を最大化しています。こうした「用途変更」を伴うリノベーションは、今後の空き家対策や地方創生においても強力な武器となります。

108億円の改装投資に見る「LTV最大化」の狙い

ヒルトン東京お台場

一方で、ラグジュアリー市場では巨額の投資が続いています。ヒルトン東京お台場が108億円を投じて大規模改装を行う背景には、富裕層やMICE(ビジネスイベント)需要の獲得、そしてLTV(顧客生涯価値)の最大化という狙いがあります。

「体験」への投資が指名買いを生む

100億円を超えるような改装は、単に「古くなったから新しくする」という次元ではなく、宿泊客が「そのホテルに泊まること自体を目的とする」状態を作るためのブランディング投資です。

宮古島に開業する「アラマンダ スプレンディド」のような高付加価値施設も同様ですが、これからのラグジュアリー層は、単なる豪華さではなく「そこでしか得られない体験」に高い対価を支払います。

運営者として意識すべきは、施設を「寝るための場所」から「体験を買う場所」へと昇華させることです。そのためには、Webサイトでの見せ方からチェックイン時の体験、客室の細かな設えに至るまで、一貫したブランドコンセプトが必要不可欠です。

2026年の宿泊運営者が注力すべき3つのポイント

最新の業界動向を踏まえ、個人や中小規模の運営者が今すぐ取り組むべき戦略を3つ提案します。

1. ターゲットの再定義と「デザイン」の活用

中国を含むインバウンド層が何を求めているのかを再考してください。「広い部屋」「自炊設備」「グループ滞在」へのニーズは、まだ供給が追いついていません。既存の施設でも、デザインの手を加え、ターゲットに合わせた空間構成に変更するだけで、ADR(平均客室単価)を大きく引き上げることが可能です。

2. DXによる徹底的なオペレーション改善

人件費の影響を最小化するために、ITの導入を加速させてください。スマートチェックインや清掃管理システムの導入は、もはや当たり前です。Archでは、これらのシステムを導入するだけでなく、それによって浮いた時間を「ゲストの満足度を高めるための施策」にどう振り分けるかまでをセットで考えています。

3. 自社チャネルの構築とブランディング

OTA(予約サイト)の送客力に頼りすぎるのは、利益率を下げるだけでなく、経営のリスクにもなります。三菱地所やヒルトンのような大手と同じく、自社の強みを明確にし、自社サイトから直接予約が入る仕組みを作ることが重要です。

そのためには、Webサイトが「ただの予約の入り口」ではなく、施設の魅力を伝える「メディア」として機能していなければなりません。

日本の観光業を支えるパートナーとして

私が株式会社Archを通じて実現したいのは、宿泊施設のオーナー様が利益を上げ、日本の観光資源が持続可能な形で守られる未来です。1000施設以上の運営で得た現場のノウハウによる、データに基づいた「勝てる運営」をサポートします。

現在の市場環境は、変化が激しく、これまでの成功体験が通用しない場面も増えています。しかし、今回紹介したアパートメントホテルやリノベーションの事例のように、変化を捉えた的確な一手を打つことで、収益は確実に改善します。

「今の運営に限界を感じている」「新しいコンセプトを一緒に考えてほしい」「自社サイトを強化して利益率を上げたい」

そのような悩みをお持ちの方は、ぜひ一度Archにご相談ください。専門家として、あなたの施設の価値を最大化する道筋を共に描きます。

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