Category: Hotel Management
Author: Shibata
Date: 2026.09.14

株式会社Archの柴田です。
「OTAの手数料を抑えたいので、公式サイトからの予約を増やしたい」。宿泊施設の方から、よく受ける相談です。
ただし、予約エンジンを入れ替えれば直販が増えるわけではありません。料金の見せ方、会員制度、Googleの無料予約リンク、公式サイトの使いやすさ、運用体制まで含めて考える必要があります。
この記事では、ホテル・旅館向けの直販予約支援サービス7社を比較します。公開されている料金や導入実績だけでなく、選ぶときに確認したいポイント、OTAと直販のバランスまで整理しました。
※料金や導入実績は2026年9月時点で確認できた公開情報です。プランや条件は変わるため、契約前に各社へご確認ください。
日本旅館協会が2025年12月に公表した2024年度の調査では、売上の経路は次のようになっていました。回答施設は151軒です。
| 予約経路 | 売上比率 |
|---|---|
| OTA | 46.9% |
| 旅行会社 | 30.1% |
| 自社ホームページ | 11.5% |
| 電話などの直接予約 | 11.5% |
自社ホームページと電話を合わせた直販は23.0%です。施設規模別の自社ホームページ比率は、大規模施設9.6%、中規模施設12.2%、小規模施設20.7%でした。
同じ調査では、黒字施設の自社ホームページ比率が11.9%、赤字施設は9.2%です。ただし、これは相関を示す数字であり、直販比率を上げれば必ず黒字になるという意味ではありません。商品力、単価、固定費、地域需要なども収益を左右します。
それでも、OTA手数料を含む営業費の比率が上がっていることを考えると、直販は一度きちんと見直しておきたいテーマです。
国内外の主要OTAは、施設向けの手数料率を公式サイトで一般公開していないことが多く、契約条件も施設やプランによって異なります。
業界では、国内OTAの基本手数料はおおむね8~10%、海外OTAは12~18%程度とされます。ただし実際には、事前決済、ポイント負担、クーポン、販売促進プログラム、広告などが加わります。基本料率ではなく、月ごとの総負担額をOTA売上で割った「実効手数料率」で把握することが大切です。
たとえば、年商1億円、OTA売上5,000万円、実効手数料率18%なら、年間負担は900万円です。売上全体の10%に当たる1,000万円を同じ単価で直販へ移せれば、OTA側の負担は単純計算で180万円減ります。
ただし、これがそのまま利益になるわけではありません。予約エンジン、決済、広告、会員特典、制作、運用にかかる費用を差し引いて判断します。
公正取引委員会の対応を受け、楽天トラベルは2019年、Booking.comとExpediaは2022年に、他のOTAより安い価格を出さないよう求める「ワイドパリティ」条項を見直しました。
一方、自社サイトとの価格差を制限する「ナローパリティ」が契約上残っている場合があります。「OTAより公式サイトを安くするのは、現在はすべて問題ない」とは言い切れません。まず自施設の契約を確認してください。
価格だけに頼らず、朝食、客室アップグレード、館内ポイント、レイトチェックアウト、先行販売、優先在庫など、公式サイトだけの特典を付ける方法もあります。予約者にとって違いが分かりやすく、ADRを崩しにくいのが利点です。
予約エンジンの料金には、初期費用、月額費用、予約手数料、決済手数料、広告運用費などがあります。
直販売上がまだ小さい施設では、従量課金型のほうが始めやすい場合があります。売上が大きくなれば、固定料金で予約手数料のないサービスが有利になることもあります。現在の直販売上と、2~3年後の目標売上の両方で試算してください。
公開料金の例は次のとおりです。
| サービス | 公開されている料金の例 |
|---|---|
| DYNA IBE | 初期費用0円、月額7,500円。広告経由は宿泊実績の5% |
| 予約番 | 初期費用30,000円、月額13,000円から。予約手数料0% |
| CHILLNN | 初期費用0円、月額10,000円+予約売上3%、または施設規模別の固定料金 |
| ねっぱん!サイトコントローラー++ | 初期費用55,000円、月額6,600円または10,780円 |
| らく通with | 月額9,800円から |
| 宿研の予約システム | 月額5,000円。ただし同社サイトコントローラーが必要 |
※税区分、決済料、オプション、最低契約期間はサービスごとに異なります。
Googleでホテルを検索すると、料金比較欄に公式サイトの宿泊プランを表示できます。無料予約リンクは掲載料やクリック料がかからず、OTAと並んで公式サイトへの入口を作れる仕組みです。
tripla、予約番、CHILLNN、abi-Booking、宿研などが対応を案内しています。ただし、サービスを契約するだけで必ず表示されるわけではありません。Googleビジネスプロフィールの確認、価格と空室データの連携、税・サービス料を含む総額の一致などが必要です。
Googleは2025年2月20日に、ホテル広告のコミッション入札を終了しました。現在の有料広告はクリック課金が中心です。無料枠と有料枠を混同せず、管理方法と費用を確認しましょう。
公式サイトの価格がOTAより高い状態では、直販は伸びにくくなります。しかし、人が毎日すべてのOTAを見比べるのも現実的ではありません。
triplaは、複数OTAの料金を比較し、設定条件に応じて公式サイト料金を調整するベストレート機能を明示しています。ほかのサービスを検討する場合も、比較対象、確認期間、更新頻度、価格の下限、例外日の扱いを聞いてください。
価格を揃える場合でも、公式サイト限定の付加価値はつくれます。DIGITALIOの調査では、同じ価格なら公式サイトを選ぶ理由として、朝食50.0%、客室アップグレード41.8%、ポイント29.8%、レイトチェックアウト24.1%が挙がりました。
会員制度は、割引率の大きさよりも「登録しやすさ」と「次回予約につながる運用」が重要です。
triplaとabi-Bookingは、会員・ポイント機能を標準機能として案内しています。DYNA IBEでは会員機能が有料オプションです。予約の途中で会員登録できるか、非会員にも会員価格が見えるか、複数施設で会員情報を共通化できるかを確認しましょう。
各社は直販比率の改善事例を公表していますが、導入時期には旅行支援や需要回復の影響を受けたものもあります。事例の数字だけで決めず、自施設と規模、客層、導入前の状態が近いかを見てください。
予約エンジンだけを比較して決めると、販売開始後に二重入力が増えることがあります。
予約番はTL-リンカーン、らく通、手間いらず、ねっぱん!、かんざしクラウドなどとの連携を案内しています。CHILLNNも、ねっぱん!、手間いらず、Beds24、TL-リンカーン、AirHostなどに対応しています。
宿研の予約システムは、同社のサイトコントローラーとの利用が前提です。triplaやDYNA IBEは対応範囲を案内していますが、現在使っている製品名とバージョンで接続できるかは、見積もり時に確認しましょう。
| サービス | 導入実績の公表値 | 料金 | Google無料予約リンク | 会員機能 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|---|
| tripla Book | 4,210施設 | 非公開 | 対応 | 標準 | ベストレート、予約、会員、多言語を一体化 |
| DYNA IBE | 累計8,300施設 | 初期0円、月額7,500円 | メタサーチ対応 | 有料 | 固定費が分かりやすい |
| 予約番 | 稼働約3,000施設 | 初期30,000円、月額13,000円から | 対応 | オプション | 予約手数料0%、連携先が多い |
| CHILLNN | 累計1,200施設 | 初期0円、月額10,000円+3%ほか | 対応 | 要確認 | ブランドの見せ方と体験販売に強い |
| abi-Booking | シリーズ累計3,000施設 | 初期・月額非公開、予約手数料0% | 対応 | 標準 | チェーン運用、LINE、会員統合 |
| 宿研 | 累計5,000施設 | 予約システム月額5,000円 | 対応 | 要確認 | 集客支援とシステムをまとめて提供 |
| Arch | 個別支援 | 要見積もり | 導入する製品による | 設計可能 | システム選定、Web、ブランド、集客を支援 |
※導入実績は各社で集計対象と時点が異なるため、単純比較はできません。
※Archは予約エンジンの自社開発会社ではなく、施設に合う製品の選定と直販導線の設計を支援します。
※本記事には当社サービスを含みます。比較の際は各社の提案と見積もりもご確認ください。
運営会社:tripla株式会社
公式サイト:https://tripla.io/
tripla Bookは、予約エンジンに会員・ポイント、決済、多言語、メタサーチ連携を組み合わせたサービスです。2026年4月時点で4,210施設への導入を公表しています。
8言語、34通貨に対応し、Googleの無料予約リンクやホテル広告との連携も案内しています。ベストレート機能は、OTAの料金を比較しながら公式サイトの価格を調整できる点が特徴です。AIチャットのtripla Botやサイトコントローラーのtripla Connectも同じ会社で提供しています。
利用料金は公開されていません。IR資料のテイクレートは、会社全体の取扱高に対する売上高の比率であり、個々の施設に請求される手数料率とは限らないため、見積もりで確認してください。
運営会社:バリューコマース株式会社
公式サイト:https://www.dynalution.jp/
旧Direct In S4は、2025年9月にDYNA IBEへ名称を変更しました。累計8,300施設への導入を公表しています。
初期費用0円、月額7,500円で、通常予約の従量課金はありません。プロモーション経由の予約には、宿泊実績の5%がかかります。メタサーチ連携、多言語、オンライン決済、PayPay、同社PMSなどを組み合わせられます。
会員機能や多言語はオプションです。ベストレート機能の有無や、現在使っているサイトコントローラーとの連携は個別に確認したほうがよいでしょう。
運営会社:株式会社キャディッシュ
公式サイト:https://www.yoyakuban.com/
予約番は、約3,000施設で稼働している予約システムです。初期費用30,000円、月額13,000円からで、予約手数料はかかりません。初月無料も案内しています。
最大8言語、Googleの無料予約リンク、ポイント、オンライン決済、約60種類のデザインに対応します。主要なサイトコントローラーとの接続先が具体的に示されているため、既存環境との相性を確認しやすいサービスです。
直販売上が増えても従量課金を抑えたい施設や、現在の公式サイトに予約機能を追加したい施設に向いています。
運営会社:株式会社CHILLNN
公式サイト:https://chillnn.com/
CHILLNNは、写真と文章を使って宿泊体験を伝えやすい予約システムです。累計1,200施設、継続率98%を公表しています。
初期費用0円で、月額10,000円と予約売上3%のプランのほか、客室数に応じた固定料金があります。2週間の無料体験があり、決済代行会社との個別契約をせずに販売を始められる仕組みも用意されています。
宿泊だけでなく、ギフトやアクティビティを含むプランを見せたい小規模ホテル、一棟貸し、デザイン性を重視する宿と相性がよいでしょう。
運営会社:株式会社アビリブ
公式サイト:https://www.ab-net.co.jp/
abi-Bookingは、宿泊業界向けのWeb制作を手がけるアビリブの予約システムです。同社の関連サービス全体で累計3,000施設への導入を公表しています。
予約手数料0%、会員・ポイント、5言語、Google連携、LINE連携などを案内しています。グループホテルの会員情報を共通化し、施設をまたいで販促したい場合に検討しやすい構成です。
初期費用と月額費用は公開されていません。また、3,000施設という数字は予約システム単体ではなく、同社の複数サービスを含む実績です。
運営会社:株式会社宿研
公式サイト:https://www.yadoken.net/
宿研は、予約システム、サイトコントローラー、公式サイト制作、OTA運用などをまとめて提供します。累計5,000施設以上の支援実績を公表しています。
予約システムは月額5,000円ですが、同社サイトコントローラーとの利用が前提です。サイトコントローラーは月額4,800円、5,800円、6,800円のプランがあります。
システムを単体で導入するというより、ネット販売全体を相談したい施設に向いています。現在のサイトコントローラーを残したい場合は、移行範囲と作業負担を確認してください。
運営会社:株式会社Arch
公式サイト:https://archcorp.jp/
Archは予約エンジンそのものを販売する会社ではありません。施設の規模、客層、直販比率、既存システムを確認し、製品選定、公式サイト、ブランド、写真、SEO・MEO・AIO、SNSまでを設計します。
Web制作は50万円から、ブランド構築は80万円から、撮影とWebを含むプランは200万円からです。直販強化を含む支援は内容に応じた見積もりになります。
予約エンジンだけでなく、「誰に、何を、どの価格で売るか」から見直したい独立系ホテル、旅館、一棟貸しに向いています。
Googleビジネスプロフィールを正しく管理し、公式サイトの料金と空室を連携します。表示価格と予約画面の最終価格がずれていると、離脱や掲載上の問題につながります。税、サービス料、子ども料金、食事・寝具条件まで確認してください。
会員ページを別に用意するだけでは、登録は増えません。非会員にも会員価格や特典を見せ、予約の流れを止めずに登録できる形にします。割引だけでなく、館内利用や再訪の楽しみにつながる特典も考えます。
朝食、アップグレード、レイトチェックアウト、先行販売、限定客室など、公式サイトを選ぶ理由を予約ボタンの近くに表示します。「最安値」と書くだけでなく、何が違うのかを具体的に伝えてください。
LINEは問い合わせ削減や滞在案内にも使えますが、友だち数だけを追っても直販は増えません。宿泊後の再訪時期、記念日、季節プランに合わせて配信し、予約ページまでの動線を測ります。
宿泊予約の多くはスマートフォンで行われます。担当者自身が、検索からプラン選択、会員登録、決済、確認メールまでを一度通してみてください。
文字が小さい、日付を戻すと条件が消える、部屋の違いが分からない、入力項目が多いといった小さな不便が、予約の離脱につながります。
OTAは、新規顧客や海外客に見つけてもらう入口です。直販の準備ができる前に在庫を絞ると、全体の売上が落ちることがあります。OTAを残しながら、リピーターや指名検索から順に直販へ移していきます。
公開後に、流入、予約開始、プラン選択、予約完了を確認しなければ、改善箇所は分かりません。制作と運用を別々に考えず、月次で数字を見る担当者を決めてください。
契約上の価格条件に触れる可能性があるほか、ADRを下げ、既存予約の取り直しを招くことがあります。価格差をつける前に契約を確認し、非価格特典も組み合わせます。
予約システム、決済、広告、会員特典、制作、担当者の人件費は直販の獲得コストです。OTA手数料と比べるときは、同じ基準で計算しましょう。
料金更新やキャンペーン設定が一人に集中すると、異動や退職で運用が止まります。変更履歴、手順、判断基準を残し、少なくとも二人が触れる状態にしておくと安心です。
施設ごとに適正値が違うため、一律の正解はありません。まずは現在のチャネル別売上、実効手数料、客層を確認し、指名検索やリピーターなど、直販へ移しやすい予約から目標を置くのが現実的です。
月額だけでは判断できません。予約手数料、決済料、広告料、サイトコントローラー、会員機能、多言語などを含む総額で比べます。運用工数と予約完了率も費用対効果に影響します。
無料枠自体に掲載料やクリック料はかかりません。ただし、対応する予約システムの利用料、データ連携、運用に費用がかかる場合があります。有料のホテル広告とは別の仕組みです。
自施設が結んでいる契約によります。ワイドパリティ条項は見直されましたが、自社サイト価格を対象とする条件が残る場合があります。契約を確認し、不明な場合はOTAへ問い合わせてください。
設定だけなら短期間で進むこともありますが、プラン移行、写真、決済審査、サイトコントローラー連携、Google連携、テストを含めると余裕が必要です。繁忙期を避け、旧システムとの並行期間も含めて工程を組みます。
直販を増やす目的は、OTAをなくすことではありません。施設に合う経路で予約を受け、必要な販売コストを払いながら、利益と顧客との関係を残すことです。
サービスを比較するときは、次の順番で考えると整理しやすくなります。
予約エンジンは重要ですが、直販強化の一部分です。宿の価値が伝わる公式サイトと、無理なく続けられる運用を一緒に整える必要があります。
株式会社Archでは、予約システムの選定、公式サイト制作、ブランド設計、写真・動画、SEO・MEO・AIO、SNS運用まで、宿泊施設の直販強化を支援しています。
「予約エンジンを変えるべきか判断したい」「OTA手数料と直販コストを比較したい」といった段階でもご相談いただけます。現在の予約経路と数字を確認し、施設に合う進め方をご提案します。
宿泊施設のブランディング、OTA関連施策、マーケティング、各種制作から施設運営まで幅広く対応可能です。
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