Category: Hotel Management
Author: Shibata
Date: 2026.09.15

株式会社Archの柴田です。
OTAの手数料を聞かれて、「だいたい10%くらい」と答えていないでしょうか。
実際の負担には、基本手数料のほか、ポイント、事前決済、クーポン、上位表示などが加わります。契約上の料率と、施設から出ていく金額の割合は同じではありません。
この記事では、直近12か月の売上と請求明細から、OTAの「実効手数料率」を計算する方法を説明します。直販へ売上を移した場合の効果と、直販側の費用を含めた損益分岐点まで出してみましょう。
※OTAの契約条件は施設によって異なります。この記事に記載する料率は2026年9月時点の民間事業者による参考値であり、各OTAの公式な一律料金ではありません。自施設の契約書と請求書を優先してください。
楽天トラベル、じゃらんnet、一休.com、Yahoo!トラベル、るるぶトラベル、Booking.com、Expedia、Agoda、Trip.comなどは、施設向けの手数料率を公式サイトで一般公開していないか、契約によって異なると案内しています。
そのため、ネット上で見つかる「国内OTAは10%」「海外OTAは15%」という数字だけでは、自施設の負担は分かりません。
さらに、同じOTAでも、参加している販促プログラム、決済方式、ポイントやクーポンによって月ごとの実効率が変わります。直販へいくら投資できるかを決めるには、自施設の明細から計算する必要があります。
直近12か月分について、次の三つを用意します。
1か月だけでは、繁忙期の広告や閑散期のキャンペーンに数字が左右されます。できるだけ12か月で見てください。税を含むかどうかも、売上と費用で基準をそろえます。
まず、年間売上をチャネルごとに並べます。PMS、会計データ、OTA管理画面の数字が合わない場合は、宿泊日基準か予約日基準か、キャンセルをどう扱っているかを確認してください。
| チャネル | 年間売上 | 構成比 |
|---|---|---|
| 楽天トラベル | % | |
| じゃらんnet | % | |
| 一休.com・Yahoo!トラベル | % | |
| Booking.com | % | |
| Expedia | % | |
| Agoda・Trip.comなど | % | |
| 旅行会社 | % | |
| 公式サイト | % | |
| 電話・メールなど | % | |
| 合計 | 100% |
日本旅館協会の2024年度実績調査では、予約経路の構成比は次のとおりでした。有効回答は151施設、回答率は8.3%のため、業界全体の正解ではなく参考値として見てください。
| 経路 | 全体 | 100室以上 | 31~99室 | 30室以下 |
|---|---|---|---|---|
| 旅行会社 | 30.1% | 38.0% | 22.4% | 18.3% |
| OTA | 46.9% | 41.6% | 53.3% | 49.1% |
| 自社ホームページ | 11.5% | 9.6% | 12.2% | 20.7% |
| 電話などの直接予約 | 11.5% | 10.9% | 12.1% | 11.9% |
| 直販合計 | 23.0% | 20.5% | 24.3% | 32.6% |
小規模施設では自社ホームページ比率が高い傾向にあります。ただし、施設規模だけでなく、リピーター、地域、価格帯、公式サイトの使いやすさなどが影響します。
請求書や管理画面から、次の費用を拾います。
広告費が別請求になっている場合や、売上から控除されて入金される場合もあります。会計上の科目が違っていても、OTA経由の予約を得るために支払った費用は集計してください。
宿泊業向けコンサルティング会社が公表した一覧では、次のような参考値が示されています。
| OTA | 基本料率の参考値 | 追加されることがある項目 |
|---|---|---|
| じゃらんnet | 8~12% | 事前決済、クーポンなど |
| 楽天トラベル | 8~10%程度 | 事前決済、クーポン、上位表示、インバウンド施策など |
| 一休.com | 10%など | 事前決済、価格最適化、外部集客など |
| るるぶトラベル | 8~10% | 事前決済など |
| Booking.com | 12%など | 決済、優先掲載プログラムなど |
| Agoda | 12%など | 販促プログラムなど |
| Trip.com | 15%など | 決済、ポイントなど |
| Expedia | 15~18%など | 掲載順位向上ツールなど |
これは一律の公式料金ではありません。料率、税の扱い、対象売上の定義も異なるため、表の数字をそのまま計算に使わないでください。
閑散期の対策で上位表示プログラムを有効にし、繁忙期にもそのままになっていることがあります。OTAの管理画面で、現在参加している広告、ポイント、クーポン、販促プログラムを一覧にしてください。
費用を止めるかどうかは、表示順位と予約への影響を見て決めます。単に料率が高いから外すのではなく、追加費用を払った期間の売上と、払わなかった期間を比べます。
計算式は次のとおりです。
OTA実効手数料率 = OTA関連費用の合計 ÷ OTA経由売上 × 100
たとえば、あるOTAの年間売上が1,000万円、関連費用が180万円なら、実効手数料率は18%です。
| OTA | 年間売上 | 関連費用合計 | 実効手数料率 |
|---|---|---|---|
| 楽天トラベル | % | ||
| じゃらんnet | % | ||
| 一休.com・Yahoo!トラベル | % | ||
| Booking.com | % | ||
| その他OTA | % | ||
| OTA合計 | % |
OTA全体の実効手数料率は、各社の率を単純平均せず、費用合計を売上合計で割ります。売上の大きいOTAを正しく反映するためです。
次の式で、OTAから公式サイトへ売上を移した場合の粗い削減額を出せます。
OTA費用の削減額 = 振り替える売上 × OTA実効手数料率
年商1億円、OTA比率50%、実効手数料率18%の施設を例にします。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| OTA経由売上 | 5,000万円 |
| OTA関連費用 | 900万円 |
| 売上の5ポイントを直販へ移す場合のOTA費用削減 | 90万円 |
| 売上の10ポイントを直販へ移す場合 | 180万円 |
| 売上の15ポイントを直販へ移す場合 | 270万円 |
この金額は、直販の利益増ではありません。公式サイトで同じ売上を獲得できることを前提にした、OTA側の費用削減額です。
直販には次の費用がかかります。
したがって、直販へ移した場合の年間効果は次のように考えます。
年間効果 = OTA費用の削減額 - 直販で増える費用 - 値引きや特典の追加原価
初期投資の回収期間は、公式サイト制作などの初期費用を、この年間効果で割ります。
回収期間(年)= 初期投資 ÷ 年間効果
年間効果が0以下なら、その条件では費用削減になりません。広告や割引を見直すか、直販へ移す対象をリピーターや指名検索へ絞ります。
OTAは手数料がかかる一方で、新規顧客や海外客に見つけてもらう入口です。掲載をやめると、OTA上の予約だけでなく、そこで宿を知って公式サイトへ来る人にも影響する可能性があります。
この「ビルボード効果」の大きさについては研究や事業者の間で意見が分かれています。ただし、直販の受け皿が整う前にOTAを一斉に止めることにはリスクがあります。
最初は、OTAごとの利益を比べ、採算の低いプランや過剰な販促から見直してください。
OTA手数料を減らしても、同じ金額を公式サイトの割引へ回せば、利益は増えません。ADRを下げ、既存予約の取り直しにつながる場合もあります。
DIGITALIOの調査では、同じ料金なら公式サイトを選びたくなる理由として、朝食50.0%、客室アップグレード41.8%、ポイント29.8%、レイトチェックアウト24.1%、最安値保証22.8%が挙がっています。
朝食、アップグレード、レイトチェックアウト、先行予約、限定客室など、原価と運用負担を把握しやすい特典を検討します。
また、OTAとの契約に、自社サイトを含む価格の同等性条件が残っている場合があります。価格差をつける前に契約を確認してください。
予約エンジンを導入しただけでは、直販は増えません。公式サイトへ来る人を増やし、宿泊プランを理解してもらい、スマートフォンで迷わず予約できる状態にする必要があります。
アクセス数だけでなく、予約ページへの遷移率、予約開始率、完了率、離脱箇所を確認します。公式サイトを自分で予約し、入力項目や決済まで一度通してみるだけでも問題が見つかります。
実効手数料率は年に一度だけでなく、月次でも追うと変化に気づけます。
| 指標 | 今月 | 前月 | 前年同月 |
|---|---|---|---|
| OTA売上 | |||
| OTA関連費用 | |||
| OTA実効手数料率 | |||
| 公式サイト売上 | |||
| 直販関連費用 | |||
| 公式サイト予約件数 | |||
| 公式サイトADR | |||
| 予約完了率 |
売上と手数料だけでなく、ADRと予約件数も一緒に見ます。直販比率が上がっても、値引きで単価が下がっていれば、期待した利益が残らないことがあります。
国内OTAの基本料率は8~10%程度、海外OTAは12~18%程度とされますが、契約と施策によって異なります。ポイント、決済、クーポン、上位表示を含め、自施設の請求明細から計算してください。
税込・税抜のどちらでも計算できますが、売上と費用で基準をそろえる必要があります。OTAによって請求書の表示が違うため、会計担当者と定義を決めてください。
基本料率の変更だけでなく、ポイント、クーポン、決済方法、上位表示プログラムを月ごとに比べます。実効率が上がった月に、追加施策で売上や利益も増えたかを確認します。
一律の正解はありません。まず5ポイント分を試算し、リピーター、指名検索、電話予約など、移しやすい層から始めます。総売上と利益を落とさないことを優先してください。
自施設のOTA契約を確認してください。価格条件に問題がなくても、値引き原資を含めて利益を計算する必要があります。非価格特典との比較も行いましょう。
予約エンジンは予約を受ける仕組みであり、集客そのものではありません。指名検索、Googleの無料予約リンク、公式サイトの情報、プランの見せ方、スマートフォンの使いやすさを順に確認してください。
OTAの負担を見直すとき、業界平均だけでは投資判断ができません。まず直近12か月の数字を集めます。
年商1億円の例では、売上の10ポイントをOTAから直販へ移すと、OTA費用は180万円減ります。ただし、同じ売上を直販で獲得できるか、広告や値引きを含めて利益が残るかは別に検証が必要です。
OTAを敵と考えるのではなく、新規顧客を得るために何円払っているのかを把握し、その費用に見合うかをチャネルごとに判断しましょう。
株式会社Archでは、OTAの実効手数料、直販比率、公式サイトの予約導線を確認し、投資回収の見込みを試算したうえで改善をご提案します。
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