【2026年9月】大阪の宿泊単価が崩れた理由|高稼働のまま価格が3割下がった原因と回復時期

Category: Hotel Management
Author: Shibata
Date: 2026.09.14

2026年夏、大阪のホテル市場では、客室の稼働に対して宿泊単価が伸びない状態が続いています。

民間調査では、7月の大阪府の推定ADRは前年同月比30.7%減。心斎橋周辺の既存ホテルも、中央値が前年の約1万6,000円から約1万200円へ下がったとされています。

ただし、この下落をそのまま「大阪の宿泊需要が崩れた」と受け取るのは早計です。比較対象となる2025年は、大阪・関西万博によって宿泊料金が大きく上振れした年でした。

大阪では、万博の反動による価格の正常化と、実際の値下げ競争が同時に起きています。

「前年比3割下落」は何を示す数字なのか

HotelBankとメトロエンジンリサーチの調査では、2026年7月の大阪府の推定ADRは前年同月比30.7%減。心斎橋周辺では35.9%減となりました。

一方、同じ調査で2024年と2026年の価格推移を比べると、おおむね近い水準にあります。2026年の価格が急に崩れたというより、万博で押し上げられた2025年の価格から、通常年に近い水準へ戻っている面が大きいと考えられます。

なお、ここで使われているADRは、OTAの掲載在庫などから算出された民間の推定値です。大阪府内すべての宿泊施設の売上を集計した確定値ではないため、「大阪府の平均客室単価」ではなく「民間調査による推定ADR」と表記するのが正確です。HotelBank/メトロエンジンリサーチ

観光庁の宿泊旅行統計では、2025年の大阪府の客室稼働率は78.8%で全国1位でした。ビジネスホテルは83.0%、シティホテルは79.4%、簡易宿所は75.2%と、いずれも全国トップです。観光庁「宿泊旅行統計調査」

民間推計でも、2026年6月の大阪府の稼働率は83.9%、7月は86.5%と高い水準が示されています。集計方法が異なるため観光庁の数字とは直接比較できませんが、「客室が埋まっている割に単価が弱い」という市場の状態は確認できます。

9月14日から15日の検索では、4,000円前後のホテルも

実際の販売画面を見ると、現在の価格の低さがよりはっきりします。

2026年9月14日チェックイン、15日チェックアウトの条件で大阪市内を検索すると、梅田から本町、難波にかけて、1,800円台から4,000円台の価格が数多く表示されました。

民泊やホステルだけが安いわけではありません。

個別の施設を見ると、4つ星ホテルのリーガプレイス肥後橋が2名1泊4,653円、ホテルリブマックス大阪本町が1名1泊3,971円と表示されています。

4つ星ホテルが2名1泊で5,000円を下回って表示される状況は、利用者にとっては魅力的です。しかし、運営側から見れば、周辺の価格相場を大きく引き下げる要因になります。

検索結果に低価格の施設が並ぶと、旅行者はその金額を地域の相場として認識します。予約を確保したい周辺施設も価格を下げやすくなり、値下げがさらに広がります。

もっとも、この画面は特定の日程、人数、検索時点における販売価格です。返金条件、客室タイプ、会員割引、税・サービス料などによって最終的な支払額は変わります。市場全体の平均客室単価や、実際に成約したADRと同じ数字ではありません。

それでも、宿泊日の直前にこれだけ多くの低価格在庫が表示されていたことは、統計上の反動だけではなく、実際の販売現場でも値下げ競争が起きていることを示しています。

特区民泊の新規受付終了で、何が変わったのか

大阪市は2026年5月29日、特区民泊の新規受付を終了しました。認定済み施設の居室追加や、床面積を増やす変更申請の受付も同日に終わっています。

ただし、終了したのは新規受付です。すでに認定を受けている特区民泊は、要件を満たしている限り、これまでどおり営業できます。また、住宅宿泊事業法や旅館業法に基づく別の開業ルートも残っています。大阪市「特区民泊の新規受付終了について」

大阪市が実施した営業実態調査の対象は、2025年10月末時点で7,312施設でした。回答した5,824施設には、すでに廃止された312施設も含まれています。大阪市「特区民泊施設に対する営業実態調査結果」

したがって、「大阪の民泊在庫が約7,000施設で固定された」と考えるのは正確ではありません。今後、新たな特区民泊は増えにくくなる一方、既存施設の廃止や用途変更によって在庫が減る可能性もあります。

制度変更の影響は、すぐにホテル価格へ表れるものではありません。既存の民泊在庫が市場に残っている間は、ホテル、ホステル、簡易宿所、民泊が同じ検索画面の中で競争する状態が続きます。

万博の反動だけでは説明できない理由

単価下落の大きな要因は、2025年の万博特需です。

万博は2025年4月13日から10月13日まで開催されました。その間の大阪では宿泊価格が通常年を大きく上回ったため、2026年の価格を前年同月と比べると、実態以上に下落幅が大きく見えます。

前年同月の比較対象から万博期間が完全に外れるのは、2026年11月分からです。この時期には前年比の数字が改善する可能性がありますが、それだけで実際の宿泊単価が回復したとは判断できません。

価格の現在地を見るなら、万博開催年の2025年だけでなく、2024年の同月とも比較する必要があります。

それでも、9月の検索画面に1,000円台、2,000円台の在庫が並び、4つ星ホテルまで5,000円を下回っている状況は、万博の反動だけでは説明しきれません。

宿泊直前まで売れ残った在庫を値下げして販売する施設が増え、低価格が検索画面の相場をつくっている可能性があります。稼働率を維持するための値下げが、結果として市場全体の単価をさらに押し下げている構図です。

訪日客数より「誰が、どのように予約しているか」

訪日客の市場構成も変わっています。

JNTOによると、2026年上半期の訪日外客数は2,108万4,800人で、前年同期比2.0%減でした。中国は56.4%減となった一方、韓国は18.6%増、台湾は20.9%増えています。JNTO「訪日外客統計」

中国市場の減少を、韓国や台湾など他の市場が補っているため、訪日客全体の人数は大きく崩れていません。

しかし、人数が同じでも、宿泊施設の売上が同じになるとは限りません。予約時期、宿泊日数、利用する客室、予約経路、旅行目的が変われば、平均単価も変わります。

国籍だけで「高単価客が減った」と結論づけることはできません。各施設が自社の予約データを確認し、どの客層、どのプラン、どの予約経路の単価が下がっているのかを把握する必要があります。

回復時期は、断定できない状況

現時点で「2027年前半に回復する」と時期を決め打ちするのは難しい状況です。

中国市場や航空便の回復、国内旅行需要、新規ホテルの開業、既存民泊の廃止など、複数の要素が宿泊価格に影響するためです。

まず確認したいのは、次の数字です。

  • 2024年同月と比べたADRとRevPAR
  • 国・地域別、予約経路別の宿泊単価
  • OTA手数料や値引きを差し引いた実質単価
  • 予約のリードタイムとキャンセル率
  • 宿泊直前に値下げした客室の割合
  • 商圏内の新規開業、閉鎖、用途変更
  • 関西空港の国際線座席数

複数の指標が改善し始めて、初めて実質的な回復と判断できます。前年同月比がプラスに転じたかどうかだけで、市場の底打ちを決めるべきではありません。

なお、観光庁の宿泊旅行統計は、2026年1月から調査の層化基準が変更されています。2025年との比較には調査方法変更の影響が含まれる可能性があるため、この点にも注意が必要です。観光庁「2026年7月・6月 宿泊旅行統計調査」

いま見直すべきは、稼働率より「利益の残り方」

単価が弱い時期は、稼働率を上げること自体が目的になりがちです。しかし、客室が埋まっていても、手数料や値引き、清掃などの変動費を差し引いて利益が残らなければ、経営は安定しません。

まず必要なのは、販売可能な最低価格を数字で決めることです。

OTA手数料、ポイント負担、清掃費、リネン費、アメニティ費などを差し引き、予約経路ごとの実質単価を確認します。表示価格ではなく、最終的にいくら残るのかを見る必要があります。

値下げをする場合も、全客室を一律に安くする必要はありません。曜日、連泊、予約時期、キャンセル条件、客室タイプごとに価格を分ければ、需要を取り込みながら単価を守りやすくなります。

公式サイト経由の予約を増やす意味も、単にOTAより安く販売することではありません。手数料を抑え、再訪につながる顧客情報を持ち、館内サービスやオプションを提案できる点に価値があります。

会員向けプランや連泊特典、レイトチェックアウトなど、OTAと単純な価格比較をされにくい商品を用意することも有効です。

大阪の宿泊需要が消えたわけではありません。ただ、万博特需が終わったことで、施設ごとの販売力と収益構造の差が、以前よりはっきり表れるようになっています。

当社では、宿泊施設の公式サイト制作に加え、宿泊施設の運営改善や、宿泊施設のM&A・不動産売買にも対応しています。

稼働率だけでは分からない収益状況や、今後の運営方針を見直したい方は、お問い合わせフォームからご相談ください。

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